本日6月30日(火)の朝日新聞に、斎藤美奈子さんの文芸時評が載りました。
見出しは「依頼と代行の物語」。
「1989 終わりの始まりから20年」という
「小説トリッパー」夏季号の特集に寄せて、
前田塁が89年に出版された
蓮実重彦『小説から遠く離れて』を取り上げている
(「『一九八九』から遠く離れて」)。
『小説から遠く離れて』は村上春樹『羊をめぐる冒険』、
井上ひさし『吉里吉里人』、丸谷才一『裏声で歌へ君が代』、
村上龍『コインロッカー・ベイビーズ』など、
80年代を代表する長編小説が「同じ構造」に収まってしまうことを
嫌味たっぷりに証明した本だった。
わははは、たしかに「嫌味たっぷり」で面白い本なんですが、
ところで、この「同じ構造」とは、斎藤さんの文を引用すると、
「依頼と代行」「黒幕」「宝探し」「双子」「捨て子」などの
キーワードで表せるモチーフとその組み合わせによる物語のこと。
黒幕からの依頼で代行を引き受けた主人公が、
双子のような協力者(彼らは捨て子としての宿命を背負っていたりする)
を得て宝探しの旅に出る。
――蓮実重彦はそこに「父親探し」のモチーフが隠されているというのだが。
さて、斉藤さんはこのように前置きしたうえで、
ところで、この5~6月に出版された複数のベテラン作家の長編小説もまた、
同じ構造を踏襲、変奏しているように見えるのは偶然なのだろうか。
という問いを立て、三つの長編小説を取り上げています。
宮本輝『骸骨ビルの庭』(上・下、講談社)
伊井直行『ポケットの中のレワニワ』(上・下、講談社)
村上春樹『1Q84』(1・2、新潮社)
ほうほう。
やはり、つい『1Q84』への評価を読みたくなるところですが、
それは実際の誌面をごらんください、ということで・・・。
とりあえず、以下の2点のみメモ。
1. 「同じ構造」という議論を(再)提示したこと。
2. 「男性作家の最近の長編小説(3作とも2巻本)」というくくりで、
『1Q84』を「ワンオブゼム」として取り上げたとこと。
ところで、あまりにもよくできたエンターテインメントとしての長編批評
(と書いても未読の方は何のことやら? かもしれませんが)、
『小説から遠く離れて』は、日本文芸社から単行本が出たあと、
河出文庫に入っていたのですが、現在は品切・重版未定の模様です。

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