2009年6月30日火曜日

斎藤美奈子さんの文芸時評(6月)

そろそろ出るかな・・・と思っていたら、
本日6月30日(火)の朝日新聞に、斎藤美奈子さんの文芸時評が載りました。

見出しは「依頼と代行の物語」


 「1989 終わりの始まりから20年」という
 「小説トリッパー」夏季号の特集に寄せて、
 前田塁が89年に出版された
 蓮実重彦『小説から遠く離れて』を取り上げている
 (「『一九八九』から遠く離れて」)。

 『小説から遠く離れて』は村上春樹『羊をめぐる冒険』、
 井上ひさし『吉里吉里人』、丸谷才一『裏声で歌へ君が代』、
 村上龍『コインロッカー・ベイビーズ』など、
 80年代を代表する長編小説が「同じ構造」に収まってしまうことを
 嫌味たっぷりに証明した本だった。

わははは、たしかに「嫌味たっぷり」で面白い本なんですが、
ところで、この「同じ構造」とは、斎藤さんの文を引用すると、

 「依頼と代行」「黒幕」「宝探し」「双子」「捨て子」などの
 キーワードで表せるモチーフとその組み合わせによる物語のこと。
 黒幕からの依頼で代行を引き受けた主人公が、
 双子のような協力者(彼らは捨て子としての宿命を背負っていたりする)
 を得て宝探しの旅に出る。
 ――蓮実重彦はそこに「父親探し」のモチーフが隠されているというのだが。

さて、斉藤さんはこのように前置きしたうえで、

 ところで、この5~6月に出版された複数のベテラン作家の長編小説もまた、
 同じ構造を踏襲、変奏しているように見えるのは偶然なのだろうか。

という問いを立て、三つの長編小説を取り上げています。

 宮本輝『骸骨ビルの庭』(上・下、講談社)
 伊井直行『ポケットの中のレワニワ』(上・下、講談社)
 村上春樹『1Q84』(1・2、新潮社)

ほうほう。

やはり、つい『1Q84』への評価を読みたくなるところですが、
それは実際の誌面をごらんください、ということで・・・。


とりあえず、以下の2点のみメモ。

1. 「同じ構造」という議論を(再)提示したこと。

2. 「男性作家の最近の長編小説(3作とも2巻本)」というくくりで、
  『1Q84』を「ワンオブゼム」として取り上げたとこと。

ところで、あまりにもよくできたエンターテインメントとしての長編批評
(と書いても未読の方は何のことやら? かもしれませんが)、
『小説から遠く離れて』は、日本文芸社から単行本が出たあと、
河出文庫に入っていたのですが、現在は品切・重版未定の模様です。

0 コメント: