
お待たせしておりました平凡社ライブラリー、
『加藤周一セレクション』全5巻の重版ができました。
これから出荷となりますので、よろしくお願いします。
以下に全巻構成・目次と、解説の抜粋をご紹介しておきます。
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『加藤周一セレクション 1 科学の方法と文学の擁護』 科学と文学/文学の擁護/途絶えざる歌
ゴットフリート・ベンと現代ドイツの「精神」
グレアム・グリーンとカトリシズムの一面
E. M. フォースターとヒューマニズム
サルトルの知識人論/人間学または『状況第九』の事
サルトル論以前/サルトルのために
解説=池澤夏樹「明晰と、広い視野」 知識の断片ばかりが「情報」という名であふれ、
総合的にものを考える力が
こんなに速やかに衰退していく時代は危険である。
だから、自分たちのいる場所を測定する基準点として、
思考のトレーニングのテクストとして、
加藤周一は読まれなくてはならない。
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『加藤周一セレクション 2 日本文学の変化と持続』 「後白河法皇」――「梁塵秘抄」より/世阿弥の戦術または能楽論
一休という現象/新井白石の世界/富永仲基と石田梅岩
福沢諭吉と『文明論之概略』/鴎外と「史伝」の意味
漱石に於ける現実/荷風覚書/龍之介と反俗的精神
林達夫とその時代/石川淳または言葉の力
丸山真男『近代日本のイデオロギー 膨張主義の起源』序文
堀田善衛私記/福永武彦の死/中村眞一郎あれこれ
解説=水村美苗「作家を知るということ」 それが[加藤周一との]出会いであった。
二度、三度お目にかかるうちに、
私はいちいち自分を恥じ入ることもなくなった。
そしてそれから、
定期的に加藤さんにお目にかかることになったのである。[・・・]
そして私は、「最良の時間」を生きるということが
どういうことかを、理解していったのである。
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『加藤周一セレクション 3 日本美術の心とかたち』 はじめに形ありき/神々と仏の出会い/現世から浄土へ
水墨・天地の心象/琳派の美学/手のひらのなかの宇宙
浮世絵の女たち/幻想に遊ぶ/東京・変りゆく都市
日本の二〇世紀/あとがき
解説=橋本治「孤立の系譜」 加藤周一氏の『日本美術の心とかたち』で語られるものは、
造形芸術に携わった日本の知識人たちの孤立の跡だろう。
私はそのように思う。[・・・]
なぜこんな私のところに「『日本美術の心とかたち』の解説を書け」
などという以来が来たかということだが、
今の私にとってこの答は一つしかない。
きっと加藤周一氏も私と同じように孤立の中にいる人なのだろう
――ただこれだけである。
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『加藤周一セレクション 4 藝術の個性と社会の個性』 藝術家と社会/現代の藝術的創造/日本の美学
仏像の様式/日本の庭/ヴィーンの想い出/美術史の縮図
ジャコメッティまたは純粋藝術家/中国の屋根の反り
絵のなかの女たち/絵 隠された意味 抄
野村万蔵の藝/真夏の夜の夢がさめる時
誰が星の空を見たか/現代オペラの問題
バッハ、バロック、バウハウス
解説=柏木博「芸術の知性へのユニヴァース」 加藤さんの知の速度と言ったが、
しかし、それはけして表層的であることを意味しない。
たとえば「充分な資料が出そろわぬ間は、何事も信じないのが、
学問的な立場であり、資料を検討せずに、
味方のいうことを信じるのが、政治的な立場である」
(「中国の屋根の反り」)ことを明確に指摘している。
加藤さんは、どのような立場からものを論じているのかを
つねに丁寧にそして明確にしているのである。
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『加藤周一セレクション 5 現代日本の文化と社会』 日本社会・文化の基本的特徴/日本文化の雑種性
近代日本の文明史的位置/日本人の外国観/日本人の死生観
戦争と文学とに関する断想/新しき星菫派に就いて/金槐集に就いて
天皇制を論ず/中立と安保条約と中国承認/言葉と戦争
ヴェトナム・戦争と平和/見るべき程のことは見つ/中国再訪
教科書検閲の病理/自由と・または・平等/現代の女の問題
「過去の克服」覚書/ヒロシマ・ナガサキ五〇年/『羊の歌』その後
平凡社ライブラリー版 あとがき
解説=上野千鶴子「知性のシニシズム」を超えて 初めて読んだ『羊の歌』に、忘れがたい言葉がある。
「知性とは何よりも自己批判的な知性であるから・・・」
自己批判に向わないような知性は知性の名に値しない、
という文章は、高校生のわたしに灼きついた。
このたび読んだ一九三九年の加藤周一
二十歳のときの文章にはこういう表現が出てくる。
「本来の知性と云うものが評判に反することを好む」
「元来知性と云うものは実に力強いものである。
力強くなければ評判に反してなどいられるようなものではない」。
二十歳の加藤さんは十七歳のわたしに呼応し、
わたしはそのあいだに共通した「三つ子の魂」に、微笑する。
そして知性に対するちゃちなシニシズムなど捨てようと、
改めてうなずく。